ほんの僅かでも・・生き残るために

「運命何てあるのか?」
急に明るくなった狭い床で、
「まさか!」なんて思ったかどうか? でも
急に、その床の上、慌てて動き回わるお前は
身の危険が迫ってくるのが判っているようだ。
でも、それは一瞬の事!
なんの前触れもなくお前は私に潰され死んだ。
私にもこれといった「潰す事」ことの正しいという
理由なんてない。ただ、いつもお前と同じ動きで、
大きさが違う仲間か?親か?に驚かされると、ただ、
「嫌だ!」と思ってはいたのだ。ず~っと。
その仲間も皆、私は処分してきた。
もう、習慣に近い。

潰されるおまえにだって理由なんて多分判っていない。
けれど、急な明るさと、人間の気配がするだけで逃げ惑う
様になったのも、それは同じように習慣になってしまった
のだと思う。君たちの生き残る手段が人間には理解できない
というだけで嫌われる生き物は他にもいる。

ただ、私には殺虫者、殺ゴキブリ者という罪の意識が
ひとかけら、心の奥にあるのを知っている。そのひと
かけらの罪の意識がもしかして、人類を救うことだって
あるかもしれない。
いや、あって欲しいと思ったりしている。